問題を解決する前に重要なのは、まず問題を正しく理解することです。
しかし、現場で起きている問題は多くの場合、複雑で断片的な情報に分散しており、そのままでは全体像が見えにくい状態です。
このまま解決に取り組んでも、表面的な対応に終始したり、本質的な課題を見落としたりするリスクがあります。
そこで必要になるのが問題の整理です。
問題整理では、現象・原因・影響などを明確にし、どの部分が本質的な課題なのかを見極めます。
ただ単に情報を並べるだけでは複雑さは解消されません。
問題整理力とは?
「問題整理力」とは、問題を「見える化」、「言える化」、「訊(聴)ける化」する力のことで、問題解決への道筋を切り拓き、個人と組織を前に進める力を指します。
そしてその力は、「誰しもが豊かな時間に変換できる社会」の礎となります。

問題整理力が求められる背景
- 既存の成功体験が通用しない時代、
- 技術と価値観が同時に変わる時代、
- 個人の生き方・働き方が多様化する時代――
だからこそ、解決に飛びつく前に「問題を整理する」ことが不可欠です。
背景・構造・影響を明確にし、関係者の認識をそろえることで、真に効果的な解決と未来への変革につながります。
問題構造化
ここで構造化が役立ちます。
構造化とは、物事や情報を要素別に分解し、その各要素の関係性を整理することです。これにより情報が「見える化」され、重要度や因果関係が把握できます。
構造化で複雑に絡み合った問題が整理されると、解決の優先順位やアプローチが明確になり、共通の認識が形成されます。

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また、問題構造化は、単なる可視化だけではなく、
- 思考を経済化し、
- 知恵※1を引き出し、
- 洞察を深めることで、
迷いの多い状況に突破口を与え、個人と組織が前に進める力を生み出します。
※1:知恵とは、学習で得る知識と異なり、問題解決のために、状況思考により、主体的、能動的に 生み出されるもの
従来の問題解決が「分かっている問題を効率的に解く力」だとすれば、問題構造化は「何が問題かを見極め、解決すべき形に変える力」です。
両者がそろうことで、従来では解決できなかった曖昧で複雑な課題にも突破口を見いだせます。
1. 現代社会の企業組織の特徴
- 環境変化の加速
技術革新・市場変動・社会価値観の変化が激しく、企業の戦略・業務プロセスも頻繁に見直しが迫られる。
- 複雑化する組織構造
グローバル化やリモートワークの普及により、部門横断的な連携やオンラインでの意思決定が増加。
- 多様化する価値観と働き方
個人のキャリア志向・ライフスタイル・価値観が多様になり、組織内での認識のずれが生じやすい。
2. 個人の仕事に対する悩み
- 業務量や目標達成プレッシャー
多くの社員が「時間が足りない」「どこから手をつければいいかわからない」と悩んでいる。 - 人間関係・コミュニケーションの摩擦
上司・同僚・部下との認識の違いや、情報共有不足による摩擦が頻発。 - キャリア不安・仕事の意味づけ
変化の激しい環境で「自分の仕事が将来どうつながるのか」という不安を感じる。
3. なぜ問題整理が重要なのか
- 本質的課題を見失いやすい
目の前の不満やトラブル(例:納期遅延、顧客クレーム)は「結果」であり、その背景には構造的な原因(例:部門間連携の弱さ、情報フローの欠陥)が潜む。
→ 解決前に構造を整理しないと、対症療法で終わる。 - 多様な視点を統合する必要がある
部門や立場ごとに“見ている風景”が異なる。整理をせずに議論すると、感情論や責任の押し付け合いになりやすい。
→ 問題を共通言語化し、関係者の認識を揃えるために整理が必要。 - 限られた時間とリソースの最適配分
全ての課題に同じリソースを割くことは不可能。重要度と影響度を見極めるには、まず問題を俯瞰的に捉える必要がある。
→ 整理なくして優先順位は決まらない。


